中学英語教員にTOEIC目標 京都府教委、設定へ
http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20160208000085
英語教員、TOEIC“合格”2割 京都府中学「資質」はOK?
http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20170210000018
今回の件でTOEIC L&Rが批判される筋合いはない
ニュースを初めて読んだとき「あぁこれはまたTOEICが批判されるパターンの奴や・・・」と思ったら案の定でした。
ヤフコメを見ると、TOEICスコアは低いけど英語はペラペラだとか、TOEICと英語力は関係ないだとか、いつもの批判的なコメントが散見されました。
はっきり言って、今回の件はTOEIC自体は関係ないですよね。
別にIIBCが『TOEICを教師の評価に使って下さいよ~』ってお願いしたわけではないでしょうし。
とにかくTOEICを叩きたい人は置いておいて、もし議論をするとすればこの2点だと考えます。
・TOEICスコアを目標値に採用した京都府教育委員会について
・TOEICのスコアが低すぎる教師について
しかし、この2点を議論するとしても、批判までする必要のない話です。
TOEICスコアを目標値に採用した京都府教育委員会
730点が英検準一級相当だからという理由で目標スコアを730点に設定し、それをクリアすることを目指したそうです。
※この730点が英検準一級相当であるというのが本当かどうかの議論はここではしません。
ETSが設定しているProficiency Scale(ランクをA~Eに設定)を見てみると、
730点~というのは上から2つ目のBランクになります。
つまり、決して低い目標ではないんです。
IIBCが公開しているデータから職業や職種によるスコアの平均値を見てみると、
・商社で働く人の平均スコアが558点
・海外部門で働く人の平均スコアが679点
・海外に2年以上滞在経験のある人の平均スコアが702点
といった感じです。
730点は英語の基礎が出来ていて今までTOEICを受験したことが無い人が
最初に目指すスコアとしては高すぎず低すぎず、ちょうどいいところだと思います。
TOEICのスコアが低すぎる教師はどうなん?
記事からスコアに関する記述をピックアップしてみると、
・今年度受験した74人のうち、目標730点以上を獲得したのは16人
・最低点は280点で、500点未満も14人いた
・2回テストを実施し、受験者の平均点は、1回目が578点、2回目が588点
最低点の280点はおそらくなんらかのミスがあったんじゃないかなと。
TOEICは四択or三択なので、適当にマークしても取れる可能性のある点数です。
これは280点を取った方に聞いてみないとわかりませんけどね。
もし実力で280点ならそのレベルの人も英語教師になれるってことか…。そんなことは無いと信じたいです。
次に、500点未満が14人というところですが、これは微妙ですね。
大学を卒業したレベルであれば、500点は取れると思います。
卒業後によほどのブランクがある、つまり中学校の範囲でしか英語に触れていない期間が長すぎたのかもしれませんね。あとはリスニング力が低すぎるか。
平均点を見ると588点ということなので、これだけあればセンター試験レベルの範囲をそれなりに出来ると思います。
しかし、目標の730にはまだ遠いですね。
じゃあ英語教師として失格なのか?となるとそれはまた別の話です。
そもそも中学英語教師は英語のプロなのかという話
英語を教える教師なんだから英語のプロだろ!というのはちょっと言い過ぎだと思います。
中学英語教師は、中学生に対して文部科学省が定める中学校学習指導要領の範囲で英語を教えるプロです。
そして、TOEICのスコアでは到底測れない”中学生に教える能力やノウハウ”をお持ちのはずです。あえて言うなら教師力?
ほとんど英語の事を知らない中学生に対して教えていくということは、もはや英語とは関係ないレベルの話です。
英語のプロだから中学英語教師をやっているわけではないし、
中学英語教師だから英語のプロだということでもないということです。
中学校の範囲で英語を教え続けている限り、TOEICのスコアは上がらないでしょう。範囲が全然違うわけですから。
TOEICよりも高校入試の分析とか頑張る方が生徒のためにもなりますし、中学英語教師のやるべき仕事を考えるとTOEICは後回しになりますよね。
でも、これだけは言っておきたい
ここまで擁護的に書いてきましたが、そうは言ってもですね、
いくら中学校の範囲だとしても英語を教える仕事をしているのなら、
「TOEICなんか所詮英語のテスト、簡単にスコアを上げてやるわ!」
というような気持ちは起こらないものでしょうか。
悔しくないんだろうか。730点とか無理っす!みたいな先生ばっかりなの?
こうなってくると英語教師のプライド的な話になってきますけどね。
記事よるとスコアが目標に達しないことによるペナルティは無い(おそらくインセンティブも無い)そうなので、
別にやらなくても査定や給料には関係が無いのでしょう。だからモチベーションもないという点もあると思います。
あとは、記事にも書いてありましたが、中学教師が多忙すぎるというのもあるんでしょうね。
授業、部活、進路指導、生活指導・・・やることがいっぱいで勉強時間を確保するのも難しいでしょう。
730点を達成しなかったらクビとか減給とかなら、必死にやるんでしょうけど、
そんなことをしたらTOEICの方に集中してしまって、肝心の中学校での授業がおろそかになるので絶対ダメです。
先生だけTOEICを受けるんじゃなくて、英語が得意な生徒にもTOEICを受けさせて勝負したらどうだろう。
余計に酷か(笑)負けたら先生の立場ないし。
そして、今回の記事の中で、僕が一番気になったのは、
本年度から英検準1級以上を取得していない英語科教員に、英語のコミュニケーション能力を測るTOEICの受験を促し、受験料を負担する事業を約750万円かけて始めた。
京都の中学英語教師はTOEICをタダで受験出来ていいな~。
IIBCさん、もう少し受験料を安くしてもらえませんかね?1回5000円超えはちょっと痛いっす。
という優しいTOEIC批判でおしまい。